「秋津島」とは、日本の古い呼び名です。
海外では、山に登ることを「征服する」と表現することがあります。
日本ではあまりそう言いません。
昔から山は、神様のいる場所だったり、恵みをいただく場所だったり、人間より大きなものとして見られてきました。
山に入らせてもらう。
木、岩、川などあらゆるものに命や気配を感じる。
そういう日本人の感覚が、私は好きです。
秋津島蒸留所では、杉やヒノキが多すぎて暗くなっている山に入っていき、少しずつ間引き、山に光を入れていきます。
枝を切ることで間が空くと、その下から広葉樹や草が生えてきます。
杉やヒノキをなくしたいわけではなく、栗も桜ももみじも、いろいろな種類の木がある山に戻していく仕事を続けています。
その山仕事で切った杉やヒノキの枝葉が原料になっています。
通常なら山に残して土に還るはずの枝葉から、ほんの少しの精油と、芳香蒸留水が採れます。
山にあった香りが、瓶に入り、街や家の中に届く。
その売上が、また山に入るための力になる。
そんな循環ができればいいと思っています。
山を見ながら、少し手を入れる。
いただいたものはできるだけ無駄にしない。採りすぎない。
また次の木が育つようにする。
征服するより、共に生きる。
秋津島蒸留所は、そんな日本の山との付き合い方を、蒸留という仕事を通して続けていきます。